女性ホルモン製剤 まとめ↓
薬理作用
女性ホルモンはエストロゲンとプロゲステロンがあり、月経(生理)を区切りとして2つのホルモンが増えたり減ったりを繰り返して、生理機能を担っている。
プロゲステロンは主に卵巣の黄体から分泌され、作用としては
・子宮内膜の充実・維持
・妊娠中は妊娠を維持
・子宮筋の緊張を緩める
などが挙げられる。
黄体ホルモン製剤は大まかに
①子宮内膜症
②月経困難症(生理痛)
③早産防止
④不正出血
に適応がある。
①は子宮内膜が普段できないところにできてしまうため。
②はいわゆる生理痛のことであり、子宮内膜から産生されるプロスタグランジンが過剰に産生され、それが過剰に子宮筋を収縮させてしまうため。
③はプロゲステロンが不足すると受精卵を包む子宮内膜の維持ができなくなってしまうため。
④も③と同じ原理。(子宮内膜が剥がれ落ちる=出血)

言うなればプロゲステロンのホルモンバランスが崩れると子宮内膜絡みの症状をきたすということですね。
薬剤 種類
現在日本で発売されている黄体ホルモン製剤はすべて人工的に合成している。
開発の段階で第1~4世代に分かれる
第1世代
ノアルテン錠(ノルエチステロン)
無月経、月経周期異常(稀発月経、多発月経)、月経量異常(過少月経、過多月経)、月経困難症、卵巣機能不全症、黄体機能不全による不妊症、機能性子宮出血、月経周期の変更(短縮及び延長)
通常、成人にはノルエチステロンとして1日5〜10mgを1〜2回に分割経口投与する。
月経周期延長のときは1日5mgを月経予定5日前から投与し始め、月経周期延長希望日まで連続投与する。
月経周期短縮のときは1日5mgを卵胞期に投与し、数日間連続投与する。
特徴
弱いエストロゲン作用もあり。妊婦に禁忌となっている。
第2世代
ノルレボ錠(レボノルゲストレル)
用法用量・適応
緊急避妊
性交後72時間以内にレボノルゲストレルとして1.5mgを1回経口投与する.
ミレーナ(レボノルゲストレル)
避妊、過多月経、月経困難症
本剤1個を子宮腔内に装着する(本剤は装着後5年を超えないうちに除去又は交換すること)
特徴
強いプロゲステロン活性とアンドロゲン活性がある。
ノルレボ錠は適応が緊急避妊。
ミレーナはなんと子宮に装着するキットである。適応は避妊以外にも月経困難症や過多月経がある。
第3世代
特徴
成分はデソゲストレル。配合錠ではマーベロンやファボワールなどがあるが単剤でなし。プロゲステロン活性は高く維持したまま、第2世代よりアンドロゲン活性を落とした成分。
第4世代
ディナゲスト(ジエノゲスト)
子宮内膜症、子宮腺筋症に伴う疼痛の改善
通常、成人にはジエノゲストとして1日2mgを2回に分け、月経周期2〜5日目より経口投与する。(治療に際しては妊娠していないことを確認し、必ず月経周期2〜5日目より投与を開始すること。また、治療期間中は非ホルモン性の避妊をさせること)
特徴
ジエノゲストはプロゲステロン活性はあって、アンドロゲン活性全くない成分。先発品のディナゲストは適応に子宮内膜症以外に子宮筋症に伴う疼痛の改善がある。後発品にはその適応がない。
・ドロスピレンという成分も第4世代。プロゲステロン活性はあって、アンドロゲン活性を抑える働きをもつ。配合錠ではヤーズがあるが、単剤でなし。
天然プロゲステロン改良型
デュファストン(ジヒドロゲステロン)
無月経、月経周期異常(稀発月経、多発月経)、月経困難症、機能性子宮出血、黄体機能不全による不妊症、子宮内膜症、切迫流早産、習慣性流早産
ジドロゲステロンとして、通常成人1日5~15mgを1~3回に分割経口投与する。子宮内膜症には1日5~20mgを経口投与する。
特徴
天然型のプロゲステロンに少し改良を加えた成分。天然プロゲステロンの持つ自然な黄体ホルモン作用を示す。エストロゲン・アンドロゲン作用はなく、排卵抑制や基礎体温上昇といった作用もない。
ヒスロン、プロベラ(メドロキシプロゲステロン)
用法用量・適応
無月経、月経周期異常(稀発月経、多発月経)、月経量異常(過少月経、過多月経)、機能性子宮出血、黄体機能不全による不妊症、切迫流早産、習慣性流早産
メドロキシプロゲステロン酢酸エステルとして、通常成人1日2.5〜15mgを1〜3回に分割経口投与する。
乳癌、子宮体癌(内膜癌)
乳癌には、メドロキシプロゲステロン酢酸エステルとして通常成人1日600〜1200mgを3回に分けて経口投与する。
子宮体癌(内膜癌)には、メドロキシプロゲステロン酢酸エステルとして通常成人1日400〜600mgを2〜3回に分けて経口投与する。
なお、症状により適宜増減する。
特徴
強いプロゲステロン活性を示す。エストロゲン作用はほとんどなく、抗エストロゲン活性がある。アンドロゲン活性は天然のプロゲステロンとほぼ同じ。
またヒスロンHは高用量のメドロキシプロゲステロンを含んでおり、こちらは乳癌や子宮体癌の治療に用いられる。
副作用
主な副作用をピックアップ。
浮腫、体重増加
症状として
体重の増加、上まぶた、下肢のむくみ、尿量の減少
などが現れた場合は減量もしくは中止。
乳房緊満感
症状として
乳房が腫れて痛くなる
多くは一時的なもので体が慣れてくればたいていは経過するが、長く続くようなら減量もしくは中止。
胃腸障害
症状として
気分が悪い、食欲がない、嘔吐
この副作用も多くは一時的なもので体が慣れてくればたいていは経過するが、長く続くようなら減量もしくは中止。
血栓症
エストロゲン製剤ほどではないが、多少なりともエストロゲン活性を示す製剤には注意が必要。
症状として
足の痛み・むくみ、胸の痛み、息が切れる、急に呼吸が苦しくなる、めまい、頭痛、吐き気、ろれつが回らない、物が二重に見える
などがあるので、こういった症状が現れる場合は中止する。
禁忌
妊婦に使えるのは今回記載した薬剤の中では天然改良型の薬剤のみ(デュファストン、ヒスロン(Hを除く)、プロベラ)
そのほかは薬剤によって違いがあるが
脳梗塞、心筋梗塞、血栓性静脈炎またはその既往
重篤な肝障害
診断未確定の性器出血
尿路出血
などが禁忌に挙げられる。
最後に

プロゲステロン製剤は、子宮内膜に関連する病気に使うと覚えた方がイメージが湧きますかね。
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