女性ホルモン製剤 まとめ
薬理作用
女性ホルモンはエストロゲンとプロゲステロンがあり、月経(生理)を区切りとして2つのホルモンが増えたり減ったりを繰り返して、生理機能を担っている。
エストロゲンは主に卵巣から分泌され、作用としては
・正常な月経周期や排卵の維持
・女性の子宮や性器の発育
・乳房のふくらみ
などが挙げられる。
卵胞ホルモン製剤は主に
①更年期障害
②膣部の炎症や乾燥の改善
③閉経後の骨粗しょう症
に適応がある。
①の原因は女性ホルモン分泌の低下することによって、卵巣を刺激しようとして視床下部や脳下垂体から大量のホルモンが分泌され、ホルモンのバランスが崩れることと、精神的ストレスが絡み合うため。
②の原因はエストロゲンは膣部のコラーゲンの産生に関わるので、エストロゲンが減少することで、潤いがなくなり、萎縮や細菌の増殖を促してしまうため。
③の原因は閉経すると女性ホルモンの分泌自体止まってしまうので、骨量維持に関わるエストロゲンの減少により、骨が薄くなってしまうため。
どの原因もホルモンが減少することで起こる事なので補充をしようということですね。
薬剤 種類
体内に存在するエストロゲンは3種類に分かれる。
・エストロン(E1)
・エストラジール(E2)
・エストリオール(E3)
エストロゲン活性の強さはE2>E1>E3
合成エストロゲンであるエチニルストラジオールは他のエストロゲン製剤よりも数段活性が強い。
エストロン(E1)製剤
プレマリン錠(結合型エストロゲン)
卵巣欠落症状、卵巣機能不全症、更年期障害、腟炎(老人、小児および非特異性)、機能性子宮出血
結合型エストロゲンとして、通常成人1日0.625〜1.25mgを経口投与する。
機能性子宮出血又は腟炎に対しては、1日0.625〜3.75mgを経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
特徴
妊娠した馬の尿から精製している。日本でよく使用されている天然型エストロゲン。
エストラジオール(E2)製剤
ジュリナ錠
用法用量・効能
更年期障害及び卵巣欠落症状に伴う下記症状、血管運動神経症状(Hot flush及び発汗)、腟萎縮症状
通常、成人に対しエストラジオールとして1日1回0.5mgを経口投与する。
なお、増量する場合は、エストラジオールとして1日1回1.0mgを経口投与することができる。
閉経後骨粗鬆症
通常、成人に対しエストラジオールとして1日1回1.0mgを経口投与する。
特徴
生理活性が一番強いエストロゲン製剤。中性脂肪を上げにくい特徴を持つ。
少量から服用開始でき用量調節が可能。
エストラーナテープ
更年期障害及び卵巣欠落症状に伴う下記症状血管運動神経症状(Hot flush及び発汗)、泌尿生殖器の萎縮症状、閉経後骨粗鬆症
通常、成人に対しエストラジオールとして0.72mgを下腹部、臀部のいずれかに貼付し、2日毎に貼り替える。
性腺機能低下症、性腺摘出又は原発性卵巣不全による低エストロゲン症
通常、成人に対しエストラジオールとして0.72mgから開始する。下腹部、臀部のいずれかに貼付し、2日毎に貼り替え、症状に応じ増減する。小児では、エストラジオールとして0.09mgから開始する。下腹部、臀部のいずれかに貼付し、2日毎に貼り替える。その後、エストラジオールとして0.18mg、エストラジオールとして0.36mg、エストラジオールとして0.72mgへ段階的に増量する。
特徴
貼付剤で唯一、閉経後骨粗鬆症に適応がある。2日毎に張り替える。貼り薬特有のかぶれには注意。経口剤よりかは副作用少ない。
ディビゲル
更年期障害及び卵巣欠落症状に伴う血管運動神経症状(Hot flush及び発汗)
通常、成人に対しディビゲル1mg(エストラジオールとして1mg含有)1包(1.0g)を1日1回左右いずれかの大腿部もしくは下腹部に、約400cm2の範囲に塗布する。
特徴
使い切りタイプ。約400cm2というと手の平いっぱいにジェルをつけて軽く(5cmくらい)円を描いたくらい。(表現しにくい…)。経口剤よりかは副作用少ない。
エストリオール(E3)製剤
エストリール錠、ホーリン錠
更年期障害、腟炎(老人、小児及び非特異性)、子宮頸管炎並びに子宮腟部びらん
エストリオールとして、通常成人1回0.1〜1.0mgを1日1〜2回経口投与する。
なお、年齢・症状により適宜増減する。
老人性骨粗鬆症
エストリオールとして、通常1回1.0mgを1日2回経口投与する。
なお、症状により適宜増減する。
特徴
エストラジオールの約1/10であり、エストロンの半分程度の作用であると考えられているが、女性ホルモンとしての作用は緩和であるものの、子宮頸部や膣などへの働きは強いことが知られている。
エストリール膣錠
腟炎(老人、小児及び非特異性)、子宮頸管炎並びに子宮腟部びらん
エストリオールとして、通常成人1日1回0.5~1.0mgを腟内に挿
入する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
特徴
適応は膣炎のみ。膣炎は悪化すると不妊の原因にもなりうる。
合成エストロゲン製剤
プロセキソール(エチニルエストラジオール)
前立腺癌,閉経後の末期乳癌(男性ホルモン療法に抵抗を示す場合)
前立腺癌,乳癌には,通常1回1〜2錠を1日3回経口投与する.ただし,年齢,症状により適宜増減する.
なお,原体の再評価結果の用法及び用量は,前立腺癌,乳癌にはエチニルエストラジオールとして,通常成人1回0.05〜1.0mgを1日3回経口投与である.
特徴
強い女性ホルモン作用によって抗アンドロゲン作用を示す。ここで注意なのが閉経前の乳癌は悪化してしまうので、必ず閉経後の末期乳癌に使用する。
副作用
主な副作用をピックアップ。
血栓症
エストロゲンは肝臓への作用として血液凝固能を亢進させる働きがある。
エストロゲン製剤を服用している患者は服用していない患者より血栓症のリスクが上がるということである。
※ただし、エストラーナテープやディビゲルなどの経皮吸収する薬剤については肝臓を通らないので、リスクは少ない。
症状として
足の痛み・むくみ
胸の痛み
息が切れる
急に呼吸が苦しくなる
めまい
頭痛
吐き気
ろれつが回らない
物が二重に見える
などがあるので、こういった症状が現れる場合は中止する。
性器出血、乳房痛
症状として
生理以外の出血
乳房が腫れて痛くなる
このような症状が現れたら減量もしくは中止する。
胃腸障害
症状として
気分が悪い
食欲がない
症状が強くなるようなら中止。
対策としては消化器症状予防のため食後に服用する。
接触皮膚炎(エストラーナテープ)
これは貼り薬特有。症状として
皮膚が赤くなる
かゆくなる
かぶれる
対策としては毎回貼る部分をずらす。
禁忌
エストロゲンによって悪化する病態や副作用の経歴にある人には禁忌となる。
エストロゲン依存性悪性腫瘍およびその疑い
妊婦・乳がんの既往歴
未治療の子宮内膜増殖症
血栓性静脈炎や肺塞栓またはその既往
動脈性血栓塞栓症疾患またはその既往
重篤な肝障害
診断の確定していない異常性器出血
その他の注意
エストロゲン製剤の作用が弱くなる原因としてタバコがある。
タバコには肝臓での薬物代謝を促進させる効果を持つので作用が減弱してしまう。
他にもセント・ジョーンズ・ワートを含む食品も代謝を促進させるので同様に注意が必要。
逆に強くなる原因としては大豆食品とビタミンCの過剰摂取がある。
大豆食品はエストロゲン様作用があるために、ビタミンCはエストロゲンの代謝を阻害してしまうために作用が増強し、血栓症のリスクが上昇する。
まぁ…意識して過剰に摂取しない限りは問題ないかな。
最後に
エストロゲン製剤の多くは更年期のタイミングに処方されるイメージかな。
血栓症に注意するのは有名な話ですから、注意喚起を促したいですね。
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