高血圧の治療薬 まとめ↓
作用機序・特徴
レニン・アンジオテンシン系は血圧をコントロールするシステム。
ARBはアンジオテンシンⅡ受容体(AT1)に結合して、アンジオテンシンⅡと拮抗することで尿細管におけるNa⁺の再吸収促進を阻害し、結果、血管の収縮を防ぎ、血圧を下げる。
アンジオテンシンⅡの受容体にはAT1とAT2があるがほとんどがAT1に結合して以下の作用を示す。
・細胞質内にCa2+を流入させることにより血管を収縮させ血圧を上昇させる。
・副腎皮質球状層のアルドステロン合成を促進し、分泌させる。
・視床下部に作用して口渇感とバソプレシン(脳下垂体後葉)の放出を促す。
・近位尿細管でNa+の再吸収を促進させる。
・レニン分泌を抑制する。
薬剤別
・第1世代
ニューロタン(ロサルタン)
高血圧症
通常、成人には25〜50mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日100mgまで増量できる。
高血圧及び蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症
通常、成人には50mgを1日1回経口投与する。なお、血圧値をみながら1日100mgまで増量できる。ただし、過度の血圧低下を起こすおそれのある患者等では25mgから投与を開始する。
特徴
尿酸排泄促進作用が報告されている1番最初に発売されたARB。ARB唯一、糖尿病性腎症に適応がある。ただ、投与後、急速に腎機能が落ちた時は中止する。
ブロプレス(カンデサルタン)
高血圧症
成人…通常、成人には1日1回4〜8mgを経口投与し、必要に応じ12mgまで増量する。ただし、腎障害を伴う場合には、1日1回2mgから投与を開始し、必要に応じ8mgまで増量する。
小児…通常、1歳以上6歳未満の小児には1日1回0.05〜0.3mg/kgを経口投与する。
通常、6歳以上の小児には1日1回2〜8mgを経口投与し、必要に応じ12mgまで増量する。ただし、腎障害を伴う場合には、低用量から投与を開始し、必要に応じて8mgまで増量する。
腎実質性高血圧症
通常、成人には1日1回2mgから経口投与を開始し、必要に応じ8mgまで増量する。
慢性心不全の状態でACE阻害剤の投与が適切でない場合
通常、成人には1日1回4mgから経口投与を開始し、必要に応じ8mgまで増量できる。なお、原則として、アンジオテンシン変換酵素阻害剤以外による基礎治療は継続すること。
特徴
降圧効果の持続時間が長い。慢性心不全においてACE阻害薬を使用していて副作用の空咳などが発生してACR阻害薬が使用できなくなった場合に使われる。
ディオバン(バルサルタン)
高血圧症
成人…通常、成人には40〜80mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状に応じて適宜増減するが、1日160mgまで増量できる。
小児…通常、6歳以上の小児には、体重35kg未満の場合、20mgを、体重35kg以上の場合、40mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。ただし、1日最高用量は、体重35kg未満の場合、40mgとする。
特徴
データ操作云々でニュースになった。値段が1番安い。ブロプレスと同じく小児に適応がある。
・第2世代
ミカルディス(テルミサルタン)
高血圧症
通常、成人には40mgを1日1回経口投与する。ただし、1日20mgから投与を開始し漸次増量する。なお、年齢・症状により適宜増減するが、1日最大投与量は80mgまでとする。
ただし、肝障害のある患者に投与する場合、最大投与量は1日1回40mgとする。
特徴
PPARγ活性化作用が1番高い→アディポネクチンが増加→心臓、腎臓、血管の保護作用、糖尿病の予防に繋がる。
主に胆汁排泄→腎臓障害の方に投与しやすい。
食後なら食後で飲み続ける。いきなり空腹時に服用すると血中濃度が上昇する報告がある。
オルメテック(オルメサルタン)
高血圧症
通常、成人には10〜20mgを1日1回経口投与する。なお、1日5〜10mgから投与を開始し、年齢、症状により適宜増減するが、1日最大投与量は40mgまでとする。
特徴
ピークの立ち上がりが早い(キレがいい)。活性が強い。アルドステロンブレイクスルー現象が起きにくい。心臓腎臓など臓器保護作用あり。現在一番使われてる印象。
ACE阻害剤およびARBにおいて、血漿アルドステロン濃度は、初期低には低下するものの、長期にわたって使用すると初期値より増加してしまう現象
アバプロ/イルベタン(イルベサルタン)
高血圧症
通常、成人には50〜100mgを1日1回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最大投与量は200mgまでとする。
特徴
PPARγ活性をもつがミカルディスより弱い。尿酸排泄促進作用をもつ。CYP2C9で50%代謝。
アジルバ(アジルサルタン)
高血圧症
通常、成人には20mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最大投与量は40mgとする。
特徴
ブロプレスの後継品。ミカルディスより降圧効果がARBの中で一番強い。
併用注意な薬剤
高カリウム血症のリスク
ARBはその作用機序から血中のK⁺が上昇する傾向にある。そのことから
- K保持性利尿薬(スピロノラクトン、トリアムテレン、セララ)
- カリウム補給剤
はK⁺の上昇を促してしまうため注意が必要。
またARBはレニンーアンジオテンシン系に関わるので、その系をターゲットにする
- ACE阻害薬
- 直接的レニン阻害薬(ラジレス)
も作用が増強してしまうため注意が必要。
ラジレス(アリスキレン)は併用禁忌やで!
ただ、他の降圧剤での血圧のコントロールが不良な場合は併用することはあるで~。
その時は高カリウム、低血圧の発現にかなり注意が必要やね!
リチウム中毒のリスク
ARBはその作用機序からNa⁺イオンが排泄促進される。もともとNa⁺イオンは再吸収される際にLi⁺イオンと競合を起こしている。つまりARBによってNa⁺イオンの再吸収が阻害されることで、その競合相手がいなくなったLi⁺イオンは血中への再吸収を促されるという流れ。
なのでリーマス(炭酸リチウム)の併用には注意が必要。
その他
・降圧効果のおおよそな順
アジルバ 〉オルメテック 〉ミカルディス 〉アバプロ 〉ブロプレス 〉ディオバン 〉ニューロタン
・いずれも妊婦に禁忌
ARBはACE阻害剤に比べて副作用が少ないのも特徴ですね。
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