今や高齢者社会やストレス社会にとって不眠の方は多い。
今回は不眠と薬の分類分けと改善ポイントを。
不眠症
不眠症はストレスや環境の変化によって、
一過性の不眠
短期の不眠(1-3週間)
長期の不眠(4週間以上)
と大まかに分けられる。
また症状によって
・入眠障害(寝るまでに30-60分以上)
・中途覚醒(夜中に何度も目覚める)
・早朝覚醒(明け方近くに目を覚まし、そのまま入眠できない)
・熟眠障害(睡眠時間は確保できているが、深く眠った感覚が得られない)
それぞれの症状に応じて、作用時間が異なった薬剤を選択していく。
ベンゾジアゼピン系、※非ベンゾジアゼピン系
作用時間の違いにより大きく4つに分けられる。
超短時間型
・作用時間6時間以内
・入眠障害、一過性不眠に適応
・目覚め感が良い
・翌朝の持ち越し効果が非常に少ない
・反跳性不眠が出やすい
・ω1受容体選択性で筋弛緩作用型弱いため脱力や転倒などの副作用が少ない。
◇種類
ハルシオン(トリアゾラム)
アモバン(ゾピクロン)※
ルネスタ(エスゾピクロン)※
マイスリー(ゾルピデム)※
短時間型
・作用時間12時間以内
・入眠障害、一過性不眠に適応
・連用による蓄積は軽度で持ち越し効果は比較的少ない
・ロルメタゾラムは1回の代謝をうけるだけで速やかに排泄され、高齢者に適する
◇種類
レンドルミン(ブロチゾラム)
デパス(エチゾラム)
エパミール、ロラメット(ロルメタゾラム)
リスミー(リルマザホン)
中間型
・作用時間24時間以内
・中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害に適応
・翌朝の持ち越し効果が見られることも少なくない
・連用していると4〜5日で定常状態になる
◇種類
ユーロジン(エスタゾラム)
サイレース、ロヒプノール(フルニトラゼパム)
ベンザリン、ネルボン(二トラぜパム)
エリミン(ニメタゼパム)
長時間型
・作用時間30時間以内
・翌朝の持ち越し効果が出現しやすい
・日中にも高い血中濃度を維持し抗不安作用がある
・連用していると1週間くらいで定常状態になる
◇種類
ダルメート、ベノジール(フルラゼパム)
ソメリン(ハロキサゾラム)
ドラール(クアゼパム)
バルビツール酸
・優れた催眠作用を有するが、耐性や依存性を早期に形成し、大量服用により呼吸抑制をもたらす
・薬の中断により、せん妄やけいれん発作などの激しい退薬症候を生じることから現在の使用は少なく、睡眠薬として用いる場合は急性で短期間で改善ができそうな不眠に限って用いる。
◇種類
ラボナ(ペントバルビタール) 短時間型
イソミタール(アモバルビタール) 中間型
フェノバール(フェノバルビタール) 長時間型
非バルビツール酸
・バルビツール酸系以外の睡眠薬で、ベンゾジアゼピン系とは異なる構造を有するものをいう
・依存性を有し、副作用が強く安全域も狭いため専門家以外の使用は難しい
◇種類
ブロバリン(ブロモバレリル尿素)
エスクレ坐(抱水クロラール)
トリクロリール(トリクロホスNa)
メラトニン受容体作動
・睡眠作用を示すメラトニンの受容体に結びついて選択的に刺激し睡眠と覚醒のリズムを整えることで、脳と体の状態から睡眠へと切り替えて、寝つきを良くする
◇種類
ロゼレム(ラメルテオン)
オレキシン受容体拮抗
・オレキシンは覚醒状態の維持に重要な働きをしている。オレキシンの働きを弱めることによって、脳の状態が覚醒から睡眠に切り替わることを助けて、寝つきを良くする
◇種類
ベルソムラ(スボレキサント)
デエビゴ(レンボレキサント)
副作用
①持ち越し効果
薬の効果が次に日まで持ち越してふらつきや眠気、倦怠感が残る。
対策→減量か短時間型への切り替え
②記憶障害
薬を飲んでから寝付くまでの記憶がない。
対策→アルコールとの併用で増強されるため、お酒ダメ、ゼッタイ。薬飲んでからは早く寝る。
③早朝覚醒・日中不安
早朝に目が覚める、不安が日中ずっと感じる。
対策→長時間型への切り替え考慮。
④反跳性不眠・退薬症状
薬がないと不安衝動にかられ、手足が震えたり、けいれん、幻覚などが現れる。
対策→薬を飲んでから最4週間で依存性が形成される。急激な中断で現れる事が多いため、徐々に量を減らしていく漸減法を試みる。
⑤筋弛緩作用
ふらつきや転倒などが生じる。
対策→ω1選択性が高い非ベンゾジアゼピン系に切り替える。
⑥奇異反応
恐怖や焦燥感、敵意、攻撃性など異常行動が見られる。
対策→アルコールとの併用で報告が多いため、お酒ダメ、ゼッタイ。
日常での改善策
不眠の治療にあたっては、その原因を調べて可能な限り排除を試みることが重要。よい睡眠を得るためにはよい生活習慣を心がける。
・睡眠時間は人それぞれなので睡眠時間にこだわりすぎない。
・寝る前4時間のカフェイン摂取、寝る前1時間のタバコは睡眠の妨げになる。また寝る前は軽い読書、音楽、ぬるめに入浴で心身ともにリラックスを試みる。
・眠たくなったら床につく。
・毎日同じ時間に起きて、毎朝太陽の光を浴び、体内時計をスイッチオン。
・夕食は寝る3時間以上前に食べる。
・睡眠は寝つきを良くすることもあるが、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となるため控える。
・規則正しく3食。基礎的な運動習慣。
・昼寝するなら15時前の20〜30分におさめる。
・眠りが浅い時は、むしろ積極的に遅く寝て早起きする。
・寝ているときの激しいイビキ、呼吸停止や足のピクつき、ムズムズ感がある場合は専門医に相談。
・睡眠薬は一定時刻に服用し寝るようにする。
睡眠薬の離脱方法(やめ方)
睡眠薬は長く服用していても、いいことはありません。
自然な眠りを取り戻すためには上記の日常での改善策を試しながら、同時に薬もやめていくことが重要。
薬のやめ方には大きく3つのやり方がある。
①漸減法
薬の量を徐々に減らしていく方法で超短時間型や短時間型などの作用時間が短い薬剤に適する。
具体的には2週か4週おきに
マイスリー10mg→マイスリー5mg→マイスリー2.5mg(5mg半錠)という風に減量していく。
ただし、減量により不眠が再発する場合はその前の用量に戻す。
②隔日法
一定量までの減量ができたら1日おきの投薬に切り替える。
試してみて経過が良ければ3日や4日おきと間隔を伸ばしていく。中間型や長時間型に適している。
③置き換え法
短時間などの作用の短い薬を服用している人が漸減法でうまくいかない場合、いったん作用時間の長い薬剤に置き換えた後、漸減法or隔日法を試していく。この方法を試した場合一過性の不眠を生じることがあるが1週間くらいで消失することが多い。
最後に
いつも服薬するときに睡眠薬を2~3種類とか飲まれている患者さんがいますけど、よっぽどストレスがたまってるんだろうなぁと毎回思いますね💦
少しでも改善できるよう服薬指導時にも日常生活の改善などをできるだけ届けていきたいですね。
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