どうも、ふみやさん(@fmyaku1015)です。
薬剤師なら誰もが知っている整形外科や歯科でよく出るあいつ…。
そう、ロキソニン(ロキソプロフェンNa)です。
もはや触らない日はないのではいかと思うくらい薬剤師にとっては身近な医薬品ですね。
新人の薬剤師さんは最初の登竜門として服薬指導に行かされるのではないでしょうか?
しかし、されどロキソニン。広く多く使われていて安全性はある程度あるとは言え、やはり注意しなければいけないことはあります。
基本情報
ロキソニン(ロキソプロフェンNa)の基本情報 | |
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【成分名】 | ロキソプロフェン ナトリウム水和物 |
【製品名】 | 先発品:ロキソニン錠60㎎、ロキソニン細粒10% 後発品:ロキソプロフェンNa錠60㎎「各メーカー」、ロキソプロフェンNa細粒10%「各メーカー」、ロキソプロフェンNa内用液「日医工」 |
【分類】 | 解熱鎮痛薬、NSAIDs |
【効能】 | ①関節リウマチ、変形性関節炎、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、歯痛などの鎮痛・消炎 ②抜歯後の歯痛の鎮痛・消炎 ③急性上気道炎(いわゆる風邪)の時の解熱、鎮痛 |
【用法用量】 | ①②通常、1回60mgの1日3回まで。 頓服の場合、1回60~120mgを経口投与。適宜増減あり。 ③頓服で1回60mg。原則1日2回までだがMAX180mgを限度とする。 |
【市販薬】 | ロキソニンS、ロキソニンS plus、バファリンEXなど |
筋肉や関節の痛み止めですね
ざっくり体内動態
ADME | |
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A(吸収) | 消化管にて吸収。 Tmax:約30分 t1/2:約1.2時間 おおよその効果持続時間:4~6時間 |
D(分布) | 脳への移行:血漿の濃度1/30と低い(動物データ) 胎児への移行:血漿濃度の9%以下(動物データ) 乳汁中への移行:ヒトにおいて認められていない |
M(代謝) | 肝臓でグルクロン酸抱合を受けて代謝(CYP関与せず) |
E(排泄) | グルクロン酸抱合を受け、尿中へ排泄 |
効果の持続時間は(半減期×4)時間経過すると体からほとんど無くなっているであろうという考えからのおおよその時間です。
作用機序
ロキソプロフェンNaは非ステロイド性抗炎症薬であり、その英語のnonsteroidal anti-inflammatory drugsの頭文字をとってNSAIDsと呼ばれています。
NSAIDsの作用点はCOX(シクロオキシゲナーゼ)であり、COXを阻害することでアラキドン酸からPG(プロスタグランジン)への合成を阻害します。PGは発熱、痛覚伝達作用、末梢血管拡張作用、血小板凝集作用をありますので、その産生を阻害することで
- 解熱、鎮痛、抗炎症作用
- 血小板凝集抑制作用
とNSAIDsは効能を示します。
ロキソプロフェンは主に1の解熱、鎮痛、抗炎症作用に関与します。
2は作用しないの?と思うところだけど、ロキソプロフェンはCOXに可逆的にくっつくので…まぁそれは別記事でまとめます。
COXには種類があって
- COX-1:常時発現している酵素で腎血流の維持・血管拡張・胃粘膜保護作用に重要な関わりを持つ
- COX-2:炎症が発現している部分に発現し、PG産生に関与する
があり、ロキソプロフェンNaはCOX-1、COX-2どちらも阻害します。
副作用
頻度が多い副作用は
- 消化器症状、特に胃粘膜の荒れ(約2%)
- 浮腫やむくみ(薬0.6%)
が有名ですね。
1の理由は胃PG合成阻害にすることによって、胃粘膜層が薄くなるから、2の理由は腎血流量が減少することにより、腎臓への負担が重くなるからやで。
重い副作用は確率としては低いが
- 急性腎障害
- 消化管出血、穿孔
- 喘息発作
などがあります。
腎臓に関しては注意しておいた方がいいかも。
製剤工夫
ロキソプロフェンNaはプロドラッグです。
プロドラッグというのは、それ自体は作用はないけれど、代謝されることによって活性化して薬理作用を示す薬の事を言います。
NSAIDsの代表的な副作用である胃腸障害を回避するため、胃を通るときは胃腸障害作用が少ない未変化体のまま通過していき、体内に吸収されてから活性代謝化するため、胃腸障害の副作用を回避するような製剤工夫をされています。
考えとるなぁ~。
相互作用
併用禁忌はないですが、併用に注意がいる薬剤があります。
ロキソプロフェンは… | 薬剤例 |
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腎臓のPGの産生を阻害することから腎血流量を低下させることにより、 腎臓で排泄する薬や作用機序に腎臓が関与するものは注意が必要。 |
排泄:リチウム製剤、メトトレキサート(血中濃度↑) Naと水の排泄減少から:チアジド系利尿薬、ACE阻害薬、ARB(効果↓) |
血小板凝集抑制効果を持つ(血をサラサラにする)ので 血液の凝固を防ぐようなものは作用が増強。 |
ワルファリン、第Xa因子阻害剤など |
血漿中でロキソプロフェンで約97%、活性体(trans-OH体)で92.8%と 非常に高いので同じくタンパク結合率が高い薬物は注意が必要。 |
SU薬のドルブタミド、グリベンクラミド、グリメピリドなど |
ニューキノロン系のGABA阻害を増強させることから痙攣を誘発する可能性がある。 | レボフロキサシン、シプロフロキサシンなど |
併用薬は必ず聞いておきましょう。
服薬指導
さぁ薬の事はわかりました。次はどう患者さんに指導していきましょう。
基本的な確認
最低でも患者さんに確認しておきたい項目はこれです。
- 胃潰瘍されたことがあるか、またはその最中か
- 過去に痛み止めを服用して喘息を起こされていないか(アスピリン喘息)
- 腎臓が極端に悪くないか
- 肝臓が極端に悪くないか
- 重篤な心機能不全を起こされていないか
- 妊娠されていないか
です。
です。ってこんなにいっぱい実際聞こうと思ったら大変やで?
でも禁忌なんやもん…。
実際聞こうとするとこんなには時間取れません…でも安心して下さい。
あらかじめ患者さんには問診表を書いてもらっています。
うん、知ってた。
- 病歴や併用薬など
- アレルギー
- 妊娠されているか
などの質問項目があるので、患者さんが記載された項目で不明な部分を聞くようにしましょう。
※問診を拒否する場合は真剣な顔して「薬が飲めない場合がありますので質問をいくつかさせてください」と押しましょう(苦笑)
症状の確認
次に症状の確認ですが、ロキソプロフェンNaの適応にもあるとおりに筋肉やのど、関節などのPGが関係している痛みには効能があります。
どういうこと?
- 頭が脈打つような頭痛(片頭痛)
- 胃やお腹の痛み
- 神経痛などのピリピリした痛み
このような症状は効きません。
理由としては痛みの発生機序にPGは関係していないからです。
なので、症状の確認はする必要があります。
適応に当てはまらない場合は服用しても効果がない事を説明した後に疑義照会するようにしましょう。
副作用の説明
頻度が高い副作用は胃腸障害です。プロドラッグすることで胃腸障害が起きにくい工夫はされているものの完全には防げるわけではないので、「胃がもたれる、痛くなることがあれば使用を中止して医療機関へ受診されるようにしてください」とお伝えします。
また、急性腎障害も起きる可能性もありますので「むくみや尿が出にくいようなことがございましたら、使用を中止して医療機関へ受診されるようにしてください」と伝えましょう。
飲み方の説明
処方は
- 1日3回毎食後
- 頓服
のパターンが多いです。
ロキソプロフェンNaを服用するのは原因治療ではなく対症療法の場合がほとんどですので、薬剤師的には「痛い時だけ服用して2回目は5~6時間以上あけてください」と説明します。
また胃腸障害を回避するため「食後に必ず飲んでください」との説明もします。
たまに1日3回毎食”前“という用法が来ます。「食前は胃を荒らすからダメじゃないの?」と直感的にそう感じる方も多いと思いますが、これは歯科などで、口内炎がひどく、ご飯を食べられないほど痛い!という場合に、ロキソプロフェンを食前に飲むことでその痛みを緩和しようという寸法です。このような場合は短期的に服用するだけなので、胃腸障害については問題にならないケースが多いです。
継続的に処方されている患者さんに対して
確認事項としては
- 胃が痛くないか、または定期的に胃カメラなどで検査をしているか
- 服用頻度はどのくらいか
- むくみなど起きていないか
は聞いておきます。
長期で処方されている人は定期的な血液検査、尿検査は行っておいた方がええですね。
インフルエンザの熱に対して
インフルエンザは熱が高くなりますよね。
そんな時、熱さましに使える解熱剤はロキソニンは基本推奨されていません。
なぜならインフルエンザ脳症のリスクが増えるからです。
インフルエンザ時に使える安全性が高い熱さましは大人、子供ともアセトアミノフェンが推奨されています。
適応外処方について
ロキソプロフェンはしばしば保険適応外での処方もあります。
頭痛・生理痛など
今「え?」って思われた方が結構多いのではないでしょうか。
実は適応には載っていません。しかし社会保険診療報酬支払基金によると、「緊張型頭痛」や「片頭痛」他にも「顎関節症の関節痛」、「尿管結石」に処方した場合は、原則として当該使用事例を審査上認めるとしています。
こういった適応外でも認める場合があって、その例が旧厚生省の通知した55年通知というものがあります。
夜間頻尿
良性前立腺肥大症や過活動膀胱による夜間頻尿に、ロキソプロフェン60mgを就寝前に投与し、1日の総尿量、排尿回数は変えずに、夜間排尿回数、夜間の1日総尿量が減少した報告があります。
ただ、これが効いたからと言って毎日服用するのは、あまり得策のようには思えません。なぜなら連日服用による胃腸障害や腎機能障害のリスクが高まるからです。
それなら、泌尿器系の薬で治療したほうがいいよね。
まとめ
- 効果の発現は約30分、持続時間は4~5時間
- 副作用:胃腸障害、腎障害に注意
- 併用薬確認(ワルファリン、メトトレキサートなどのハイリスクは特に)
とまぁ基本中の基本(?)のロキソニンですが、結構注意することはあるので、たかがロキソニン、されどロキソニン。
しっかり理解しておきましょう。
参考:ロキソニン錠60mg/細粒10%、ロキソニンインタビューホーム、夜間頻尿にロキソプロフェンを使用することはあるか?(一般)公益社団法人 福岡県薬剤師会 |質疑応答 (fpa.or.jp)、Microsoft PowerPoint – (20110420版)55年通知と公知申請.pptx (mhlw.go.jp)
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