ある日…
Rp.
イソニアジド
リファンピシン
エタンブトール 朝食後

MACの処方…かな?
ん?確かリファンピシンって…食前投与やん!早速疑義照会や!
………

そのままで変更なしだった…でもいいんかなこれって…

あぁそれね。そこの病院はリファンピシンは食後で出してくるよ…ってごめんごめん。言ってなかったね(汗)

これっていいんですか?添付文書には”原則、朝食【前】”って書いてますけど

せやなぁ
じゃあ何故食後で指示が来ているか、また食後で薬がどのくらい治療に影響があるのか見てみようか
一番の目的は?
添付文書では”原則、朝食【前】”と記載がありますが、自分が働いていて食前で来たことは実は見たことがありません。初めてその処方箋を受けた時は疑義照会はしたのですが、用法は”そのままで”。
その時の疑義照会の相手は病院薬剤師の方だったんですけど、理由を聞いてみると【コンプライアンス向上のため】でした。
次に異動したときの店舗でも別病院からの処方で疑義照会して、その時に対応をして下さった病院薬剤師さんからの返答でも【飲み忘れないために】でした。

なるほど
そういった理由で…
実際どうでしょう。リファンピシン以外の2剤が食後でリファンピシンのみが食前の処方で分けられていたら…

自分やったら絶対飲み忘れる
他にコンプライアンス向上以外にも理由があって、リファンピシンの食後投与は胃腸障害(食欲不振、悪心、嘔吐、胃痛、下痢、胃不快感等)を軽減する意味合いもあります。
食後に飲むとどうなる?血中濃度は?
薬剤師なら薬の情報を調べるとき、まず何を見るでしょうか。
そうですね。添付文書とインタビュホームですね。

でもどっちも食事に関しては何も載ってなかった…
では文献だ!ということで検索かけてみました。
この文献では食前、食後それぞれに1回450㎎のリファンピシンを服用して血中濃度の立ち上がりをみていますね。それが以下の表。
2h | 4h | 6h | Cmax | AUC | |
食後 | 1.78±0.79 | 5.76±1.04 | 3.54±1.28 | 5.76±1.04 | 18.63±4.35 |
食前 | 9.32±0.88 | 6.58±1.13 | 4.05±0.74 | 9.32±0.88 | 35.83±3.29 |

この表を見るに、食後だと血中濃度の立ち上がりが遅くて、最高血中濃度も食前に比べて約38%低下しているね
確かに食後だと吸収が落ちている。まぁでもこれは1回450㎎なので保険適応内である1回600㎎で投与すると33%増量するわけですから同じくらいになるのではないでしょうか(単純計算ですが…)。
現状は臨床効果にはさほど影響がないとされている?
公益財団法人結核予防会結核研究所 のQ&Aではこのように記載されています。
リファンピシン(RFP)は、食前の服用の方が吸収がよいとされていましたが、食後のほうが胃の負担も少なく、効果に大きな差はないことが明らかになり、現在は他の薬と一緒に1度で確実に内服することが勧められています。
結核の治療のためには、確実な内服が大切なので、自分の生活習慣に合わせて、最も忘れにくい時に服用するとよいでしょう。
https://jata.or.jp/rit/rj/taisaku(QA)3Chiryo(N).htm Q&Aより
また、こう記載されている背景には、先ほどの RifampicinのPharmacokineticsに対する食事の影響 にも記載がある通り、日本においては”リファンピシンの食前・食後の最高血中濃度の高さに大差はない”という1972年の報告に強い影響を受け、どうやら食後に投与される現状が続いているようです。
ただ、やはり確かに血中濃度が下がることは明らかになっています。これが臨床効果にどう影響を与えるかは未だ分からない現状ですが、【食後投与は吸収が下がる】ということは念頭に置いておいたほうがいいでしょう。
参考文献
リファンピシン添付文書・インタビューホーム
RifampicinのPharmacokineticsに対する食事の影響
公益財団法人結核予防会結核研究所 Q&A
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