どうも!えふえむ(@fmyaku1015)です。
降圧薬の中で最も使われているのではないかと思うくらい、日々目にしないことはない薬剤。今日はそんなアムロジピンについて見ていきます。
作用機序
ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬は膜電位依存性L型カルシウムチャネルに特異的に結合し、細胞内へのカルシウムの流入を減少させることにより、冠血管や末梢血管の平滑筋を弛緩させる。
非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬(ベラパミルやジルチアゼム)と比較すると、血管選択性が高く、心収縮力や心拍数に対する抑制作用は弱い。
医療用医薬品アムロジピンKEGG
L型カルシウムチャネルって?
降圧作用に関わる主なチャネルで、さらに3つの結合部位が存在。
・N(nifedipin)部位:血管拡張作用が強い一方、心筋への作用は少ない。
・D(diltiazem)部位:主に心臓の血管に作用。降圧目的ではあまり使われない。
・V(verapamil)部位:心臓への親和性が圧倒的。心房細動や不整脈に使われる。
血管の平滑筋細胞は細胞内にCa2+を取り込むとキュッと収縮するのでそれを抑えることで血管が緩みます。
アムロジピンはN部位にくっつくやで
分類についてはこちら。
アムロジピンの体内動態あれこれ
アムロジピンは1日1回でいいお薬となっています。それもそのはず、半減期が約36時間とかなり長くなっています。この半減期から1日1回飲むことで、定常状態になる薬であり、(約36時間×4-5=)6~7日経ってくると、期待される降圧作用が安定的に効いてきます。
2日に1回の投与でも効くの?
降圧薬というのは効果を切らすことなく効いてほしいわけですが、2日に1回(隔日投与)はどうなの?って話です。薬が安定して効いているというのは定常状態になるか否かで見ていきます。
計算していきましょか
2日に1回ってことは投与間隔が48時間になります。定常状態になるかの計算は
投与間隔/半減期が ≦3なら半減期×4-5で定常状態、4≦なら定常状態にならないので
48/36≒1.33≦3 なので定常状態になります。定常状態になるのは半減期に依存しますので隔日投与でも約1週間でなります。
以前にツイートした内容
え、じゃあ隔日投与でもいいんじゃ?
って思いますよね。安定するならいいんじゃんとは思うのですが血中濃度が少し違います。それを評価するのに蓄積率というのを使います。
蓄積率ってなんぞ?
蓄積率というのは定常状態時の最大濃度(Cmax)が最初の投与時のCmaxの何倍になるかを表したものです。
ただし1-コンパートメントモデルに限る。
式で表すと R=1/1−(1/2)^【τ】/【t1/2】 です。(t1/2:半減期、τ:投与間隔)
とまぁこんな式出されてもピンとないので、簡単な表を参考までに。
半減期と投与間隔だけで値は出ます。投与間隔/半減期を仮にAとして
A | 4 | 3 | 2 | 1.5 | 1 | 0.9 | 0.8 | 0.7 | 0.6 | 0.5 | 0.4 | 0.3 | 0.2 | 0.1 |
R | 1.07 | 1.14 | 1.33 | 1.55 | 2 | 2.15 | 2.35 | 2.6 | 2.94 | 3.41 | 4.13 | 5.33 | 7.73 | 14.93 |
だいたいこんな感じになります。
では、蓄積率計算していきましょか。(以下、正確に計算しています)
投与間隔が24時間の場合:24/約36≒0.67 ➡ R≒2.69
初濃度のだいたい2.69倍の濃度がピークにくる形で定常状態が続きます。
ここでノルバスクのインタビューホームを見てみますとだいたい3倍ほどで近しいですね。
※参考
蓄積率を求めるのに別の求め方もありますのでご紹介を。(のーみんさんありがとうございます)
こっちの計算の方が乗数の計算をしなくて済むのでやりやすいですね!
話はそれましたが、では隔日投与はどうでしょう。
投与間隔が48時間の場合:48/約36≒1.33 ➡ R≒1.66
2つの蓄積率を比較すると 1.66/2.69≒0.49 となります。
つまり、48時間間隔でのCmaxは24時間間隔でのCmaxの半分ほどになるということになります。
上のデータを使って、だいたい半分の濃度になるので、定常状態が0.89~1.13ng/mLくらいになる感じやね。
血中濃度が同じじゃないってのが分かりますね。
では、最初に戻って2日に1回投与は効くのか?という疑問に対しての答えですが…
「5mg隔日なら2.5mgを毎日飲んだ時と同じくらいになるんじゃない?」です。
あいまい(笑)
なんでそういった考えになったかというと、ノルバスクの添付文書データを参考にして…
5mgの初濃度は約2.6ng/mL、隔日投与の蓄積率は先ほど求めた R≒1.66 を使って…
約2.5ng/mL×1.66≒4.15ng/mL
2.5mgの初濃度は約1.2ng/mL、毎日投与の場合は蓄積率 R≒2.69 を使って…
約1.2ng/mL×2.69≒3.23ng/mL
ちょっと5mg隔日のほうが高い感じですけど、だいたい同じくらいですね(無理やり)
こんな感じ。
まぁ正直5mgで安定しているから減量しようかってなった時に隔日投与するのはコンプライアンス的にはまれですよね(笑)それなら2.5mgに落として毎日飲むほうが忘れんでいいかなと思います。
今流行りの1日2回の投与はどない?
個別指導でもうるさい1日2回の投与の話ですね。これも血中濃度的にはどうなのか見ていきましょか。
例えば
5mg/回を1日2回に投与する場合
投与間隔/半減期=12時間/約36時間≒0.33➡蓄積率 R≒4.89
約2.5ng/mL×4.89≒12.23ng/mL
5mg/回を1日1回に投与する場合
投与間隔/半減期=24時間/約36時間≒0.67➡蓄積率 R≒2.69
約2.5ng/mL×2.69≒6.79ng/mL
だいたい2倍くらい違いますね。
ちなみに10mg/回を1日1回で投与する場合の定常状態のCmaxは
5.84ng/mL×2.69≒15.70ng/mL
10mg/回 分1 よりかは5mg/回 分2 のほうが濃度は低い感じやね。
では1日2回にするメリットは?
さて血中濃度がどれくらいになるかを見ていきました。正直、1日2回の服用ってコンプライアンス的にどうかなとか思いますし、5mg/回 分1 で降圧効果が不十分なら10mg/回 分1 と飲む回数はそのままで増量だけしたらよくない?と感じるのですが、ガイドラインにはこのような記載があります。
降圧薬は1日 1回投与を原則とするが,24時間にわたって降圧することがより重要である。1日2回の投与が好ましいこともある。
高血圧治療ガイドライン2019
さらに読み進めると
現在市販されている降圧薬は,臨床現場で使用されたとき,必ずしも効果が24時間は持続しないことが少なくない。家庭血圧や24時間血圧測定で得られたトラフの血圧が高値の場合,朝に服用している降圧薬を晩に服用したり,朝晩の2回に分服,あるいは晩や就寝前に追加投与することを試みる。
高血圧治療ガイドライン2019
理論上では半減期が長い薬物は定常状態になり、24時間効くはずが、実際、臨床で使われたときは24時間続かないことが少なくないらしい。なので1日2回にすることで血中濃度の立ち上がりの波を細かくすることで安定的に効かそうということなんですね。
早朝の血圧が高い方に晩にも追加することで早朝高血圧が改善したという報告もあるみたいです。
まぁでも基本、降圧効果が不十分な場合は1日2回に増やすより、他の降圧剤を少量併用するパターンが多いですね。2剤、3剤と併用して、それでも不十分なら分2にしてみるといった具合でしょうか…。
高齢者に対してはどんな感じ?
まぁ今までの対象は高齢者ではない方に対しての話だったんですが、では高齢者ではどない?てな話です。高齢者は肝機能、腎機能共に働きが衰えてきます。つまり高齢者は体の中に薬が残りやすいのです。
では実際のデータも見ていきましょか。
Cmax、AUCはグンッと上がっていますが、半減期は有意差なしとの記載があります。血中濃度は健常者と比べて約2倍くらいでしょうか。半減期に有意差はないという事なので定常状態になるのに要する時間は健常者と変わらず、約1週間くらいになります。
といっても、これn数6やし、もっと数増やしたら有意差つきそうな気
がせんでもないな(笑)
ノルバスクのインタビューホームにこんな記載があります。
高齢者では一般に過度の降圧は好ましくないとされていること及び高齢者での体内動態試験で血中濃度が高く、血中濃度半減期が長くなる傾向が認められているので 30)、低用量(2.5mg/日)から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること
ノルバスク インタビューホーム
やっぱり体には残りやすいよね。
高齢者では血中濃度は倍くらい伸びる傾向にあるという点を抑えておきましょう。
副作用について
降圧剤といったら、やはり血圧を下げるのそれに関連した副作用が起きがちです。アムロジピンは副作用が出にくい薬なんですが、10mg以上では副作用の発現率が上昇すると報告があります。
ふらつき、めまい
体感的にやはりこれが一番多いでしょうか。血圧が下がりすぎて、脳に十分な血液が遅れなくなりふらつきやめまいなど起こします。対策としては一度椅子などに腰かけてコップ1杯の水などで飲んでもらい、少し様子を見ます。頻繁にふらつきやめまいを起こす場合は減量や他薬剤への変更を行います。
動悸
これは血圧が下がることで、反射的に心臓が血圧を上げようとして心拍数を増やすので、動悸が起こるという仕組みですね。これは生理的な反応ですので、特に心配はいらないです。
ほてり
これも動機と同様、心配のいらない副作用です。末梢血管の血の巡りがよくなることで起こります。
むくみ(浮腫)
これは他降圧剤と違ってアムロジピンみたいなCa拮抗薬に起こりやすい副作用ですね。機序については以前こんなツイートを。
歯肉肥厚
意外と忘れがちな副作用です。その字の通り、歯肉が肥大化する副作用で痛みや歯肉炎などに繋がったりします。飲み始めの1~3か月に起こることが多く、初めてCa拮抗薬を服用する方にはいっておく必要があります。悪化予防のためには歯垢の除去が有効です。また起きた時の対策としては他薬剤に変えて様子を見ます。
相互作用(飲み合わせ)
グレープフルーツジュース(GFJ)
薬剤師の皆さんはCa拮抗薬と聞いて真っ先に思い浮かぶのはグレープフルーツジュースではないでしょうか。そうGFJです。
学生の時、GFJの飲み合わせと言ったらCa拮抗薬!そう習ったものです。
しかし、このGFJとCa拮抗薬の飲み合わせ薬剤によっては問題なかったりします。以前、このようなツイートをしまして…
そうなんです。この表を見るとアムロジピンやジルチアゼムに関してはそこまで血中濃度上がらないんですよね。アムロジピンやジルチアゼムはCYP3A4で代謝されるお薬ですが、小腸のCYP3A4ではあまり代謝されないことが分かっています。肝臓のCYP3A4でほとんどが代謝されます。
なので小腸のCYP3A4を阻害するGFJとの相互作用もそこまで敏感にならなくてもいいんですよね。
CYP3A4阻害剤
有名どころとしてはマクロライド系やリトナビル、イトラコナゾールでしょうか。
これらはCYP3A4を強く阻害するので、Ca拮抗薬の血中濃度が上がり、副作用が起こる可能性が上昇します。以前こんなツイートも…
マクロライド系とCa拮抗薬との併用はけっこう見ますので注意が必要です…。
CYP3A4誘導剤
有名どころではリファンピシン、フェノバルビタールでしょうか。
これは阻害剤との逆でCa拮抗薬の血中濃度が下がり、降圧効果が薄れてしまいます。
他にも
シンバスタチンはアムロジピンとの併用により、AUCが77%も上昇するようなことが添付文書には記載があります。機序は不明ですが、このような場合はシンバスタチンを別スタチンに変えるのがよろしいでしょうね。
ハイリスク薬で言えば、タクロリムスも注意が必要です。タクロリムスもCYP3A4で代謝される薬剤であり、アムロジピンとの併用でタクロリムスの血中濃度が上がり、腎毒性を示すことがありますので注意が必要です。併用する場合はタクロリムスの血中濃度をモニタリングしつつ、タクロリムスの量を調節する形で対応します。
まとめてみて
アムロジピンで一番驚いたのがGFJとの相互作用ですかね。だって、学校ではCa拮抗薬=GFJダメって認識で習うんですもの…。実際、薬剤師として働いていると学生の時に習ったことは本当に基礎の基礎なんだなぁとか感じたりします。知らないことがたくさんです(´;ω;`)
だらだら書いてみましたが、今日はこの辺で。
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