どうも、ふみやさんです。
日々、薬局での服薬指導やドラッグストアでOTC販売をしていると、たまに聞かれる「お腹が緩くて、何かいい薬ない?」「ヨーグルトとかいいのかしら?」。
お腹の異常には整腸剤というのがセオリーです。ヨーグルトもお腹にいいようなイメージがあります。
子供ちゃんが胃腸炎などでお腹を崩した時もビオフェルミンやミヤBMなどの整腸剤は副作用もほとんどなく、処方されるのをよく見かけます。
ドラッグストアにおけるOTC販売でも、お腹を崩していると、とりあえず整腸剤を勧めると安牌、みたいな感じもありますよね。
ただ、下痢は下痢でも整腸剤やヨーグルトなどが、逆に下痢を悪化させてしまう可能性があるケースがあるのです。
イリノテカンによる下痢
イリノテカンは植物アルカロイドから合成された医薬品で、胃がんや直腸がんなどに使われるトポイソメラーゼ阻害薬の一つです。
イリノテカンの副作用の一つに高度な下痢があり、【早発性の下痢】と【遅発性の下痢】があります。
- 【早発性の下痢】はイリノテカンはコリン作動性をもち、それにより腸管運動が活発になり、下痢になります。発現時期としてはイリノテカンの投与中やその24時間以内に多いです。
- 【遅発性の下痢】はイリノテカン投与後から4~10日後に現れる下痢で、これはイリノテカンの活性代謝物であるSN-38という物質が腸管粘膜を直接刺激し、下痢を起こします。
SN-38は腸内において、酸性条件下で毒性が上昇する
SN-38が持つラクトン環が酸性条件下で閉環してラクトン体になることで、腸管から再吸収されやすくなり毒性が上昇します。なので、理論上では腸管内を酸性に傾ける整腸剤やヨーグルトなどの乳製品は下痢の副作用を悪化させてしまう可能性がありますので避ける必要があります。
まさか、お腹に良かれと思うような整腸剤が下痢を悪化させる原因になりうるとは…
イリノテカンによる下痢の予防や治療
【早発性の下痢】はコリン作用によるものなので
- ブチルスコポラミンなどの抗コリン薬
【遅発性の下痢】はいくつか挙げられ、
- 止瀉薬であるロペラミド
- 腸管内をアルカリ化させる炭酸水素ナトリウム
- 胆汁をアルカリ化させるウルソデオキシコール酸
- SN-38が便と共に腸内停滞を防ぐために、イリノテカン投与直近にセンノシドや酸化マグネシウムなどの予防投与
- SN-38は腸管において、グルクロニダーゼによって生成されるが、その酵素を阻害する報告のある半夏瀉心湯
整腸剤の投与は下痢の改善する報告もある
とここまで整腸剤は下痢を悪化させる方向に働くことを記載しましたが、改善するという報告もあります。
これらの論文ではざっくり言うと、「グレードⅠ及びⅡの下痢については、抑制できない(有意差がない)がグレードⅢ及びⅣの下痢は整腸剤の投与によって抑制(予防)できた」という感じです。
グレードⅠ及びⅡの軽い下痢でもプラセボと比較しても悪化するということではないようです。理論上では悪化する方向に働くと分かっていても、実際の臨床上では結果が違ったりもします。
アンケートもとってみた
Twitterでアンケート機能があるのでフォロワーさんに聞いてみました。
皆さんが昔から、イリノテカンの下痢に整腸剤は下痢が悪化するかもしれないと言われてきたことを知ってるかどうかは置いておいて、半数以上は摂らないほうがいいという認識です。
フォロワーさんは薬剤師の方が多いけど、中には医師の方もいるかもしれません。最近の論文の報告では整腸剤の投与は悪化しないということが分かっていても、このような質問を受けたときには、まずは医師と相談して整腸剤を服用してもいいかの確認はしたほうがよいですね。
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