↓不整脈まとめ
Ⅱ群(β遮断薬) 作用機序
β遮断薬は、交感神経のβ1受容体およびβ受容体に結合し、カテコールアミンと競合することでβ作用を抑制する。
心臓にはβ1受容体が多く存在しており
- 洞結節の自動能の調節
- 心筋の収縮
- 刺激伝導速度の低下などに働く。
心不全に対するβ遮断薬の投与では、異常に緊張・亢進した交感神経系のβ1受容体を抑制することにより、降圧作用や心拍数の減少を図り、また心筋エネルギー代謝を改善することにより、心臓への負担を軽減したり心筋細胞の保護作用を示す。
こうした効果から、β遮断薬は
心臓にもβ2受容体が存在するが、通常はβ2遮断薬は用いられず、臨床で用いられるのはβ1選択性が高いものでα受容体遮断作用の有無、内因性交感神経刺激作用(ISA)や膜安定化作用(MSA)の有無などによって使い分けられる。
内因性交感神経刺激作用(ISA)とは
β遮断薬は、通常、内因性カテコールアミンの存在下で、そのβ受容体への結合を遮断することで効果を示すが、内因性カテコールアミンが存在しない場合はβ遮断薬自体がβ受容体を刺激する作用を持つ。
膜安定化作用(MSA)とは
細胞膜のNa+チャネル(やCa2+チャネル)を遮断する作用で、キニジン様作用と呼ばれる。この作用があると収縮力を低下させる効果が強まり、心機能抑制の危険が高まるが、心臓の興奮性やエネルギー消費を押さえるという意味では治療効果に寄与していると考えられる。
薬剤別・種類
β1選択性ISA-
セロケン(メトプロロール)
用法用量・効能
・本態性高血圧症(軽症~中等症)
通常、成人にはメトプロロール酒石酸塩として1日60~120mgを1日3回に分割経口投与する。効果不十分な場合は240mgまで増量することができる。なお、年齢、症状により適宜増減する。
・狭心症、頻脈性不整脈
通常、成人にはメトプロロール酒石酸塩として1日60~120mgを1日2~3回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
特徴
β1選択性なので気管支喘息の人にも使える。ISA(-)は心臓の拍動を減少させるため、不整脈・狭心症に対しての有効性が高いとされている。セロケンL120mg(1日1回タイプ)がある。
メインテート(ビソプロロール)
用法用量・効能
・本態性高血圧症(軽症~中等症)、狭心症、心室性期外収縮
通常、成人にはビソプロロールフマル酸塩として、5mgを1日1回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
・虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全
通常、成人にはビソプロロールフマル酸塩として、1日1回0.625mg経口投与から開始する。1日1回0.625mgの用量で2週間以上経口投与し、忍容性がある場合には、1日1回1.25mgに増量する。その後忍容性がある場合には、4週間以上の間隔で忍容性をみながら段階的に増量し、忍容性がない場合は減量する。用量の増減は1回投与量を0.625、1.25、2.5、3.75又は5mgとして必ず段階的に行い、いずれの用量においても、1日1回経口投与とする。通常、維持量として1日1回1.25~5mgを経口投与する。
なお、年齢、症状により、開始用量は更に低用量に、増量幅は更に小さくしてもよい。また、患者の本剤に対する反応性により、維持量は適宜増減するが、最高投与量は1日1回5mgを超えないこと。
・頻脈性心房細動
通常、成人にはビソプロロールフマル酸塩として、1日1回2.5mg経口投与から開始し、効果が不十分な場合には1日1回5mgに増量する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最高投与量は1日1回5mgを超えないこと。
特徴
適応が広く、臨床でよく用いられる。心不全で用いる場合は低用量から開始する。同じ成分で貼り薬のビソノテープがあるが、こっちは高血圧と頻脈性心房細動のみ。
テノーミン(アテノロール)
用法用量・効能
・本態性高血圧症(軽症~中等症)、狭心症、 頻脈性不整脈
(洞性頻脈、期外収縮)通常成人にはアテノロールとして50mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により、適宜増減できるが、最高量は100mgまでとする。
特徴
腎排泄型。水溶性のため抹消循環障害、糖代謝、脂質代謝などへの影響は少ないと言われている。妊婦に禁忌でない。他に妊婦に禁忌でないのはインデラル。
β1選択性ISA+
◆アセタノール(アセブトロール)
もう あまり処方されないので割愛
β非選択性ISA-
インデラル(プロプラノロール)
用法用量
・本態性高血圧症(軽症~中等症)
通常、成人にはプロプラノロール塩酸塩として1日30~60mgより投与をはじめ、効果不十分な場合は120mgまで漸増し、1日3回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
・狭心症、褐色細胞腫手術時
通常、成人にはプロプラノロール塩酸塩として1日30mgより投与をはじめ、効果が不十分な場合は60mg、90mgと漸増し、1日3回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
・期外収縮(上室性、心室性)、発作性頻拍の予防、頻拍性心房細動(徐脈効果)、洞性頻脈、新鮮心房細動、発作性心房細動の予防
成人
通常、成人にはプロプラノロール塩酸塩として1日30mgより投与をはじめ、効果が不十分な場合は60mg、90mgと漸増し、1日3回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
小児
通常、小児にはプロプラノロール塩酸塩として1日0.5~2mg/kgを、低用量から開始し、1日3~4回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。効果不十分な場合には1日4mg/kgまで増量することができるが、1日投与量として90mgを超えないこと。
片頭痛発作の発症抑制
通常、成人にはプロプラノロール塩酸塩として1日20~30mgより投与をはじめ、効果が不十分な場合は60mgまで漸増し、1日2回あるいは3回に分割経口投与する。
・右心室流出路狭窄による低酸素発作の発症抑制
通常、乳幼児にはプロプラノロール塩酸塩として1日0.5~2mg/kgを、低用量から開始し、1日3~4回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減する。効果不十分な場合には1日4mg/kgまで増量することができる。
併用禁忌
リザトリプタン
特徴
適応たくさん。妊婦に使える。肝代謝型。β非選択性なので気管支喘息に使えない。
β非選択性ISA+
ミケラン(カルテオロール)
用法用量
・本態性高血圧症(軽症~中等症)、心臓神経症、不整脈(洞性頻脈、頻脈型不整脈、上室性期外収縮、心室性期外収縮)、狭心症
通常、成人にはカルテオロール塩酸塩として、1日10~15mgより投与をはじめ、効果が不十分な場合には30mgまで漸増し、1日2~3回に分割経口投与する。なお、年齢・症状に応じ適宜増減する。
特徴
緑内障の治療薬にもなっている(目薬)。他にもミケランLAカプセルがあるがこちらは適応が高血圧のみ。心臓神経症に適応がある。
心臓神経症とは、胸の痛みや呼吸苦、動悸など心臓に関わる症状があるにもかかわらず、検査などでは異常が認められず特定の身体疾患と診断できないものを指します。不安やストレス、抑うつ状態と関連していることが多く、不安神経症や身体表現性障害といった精神疾患に準じた治療が行われます。
心臓神経症について
αβ遮断薬
アーチスト(カルベジロール)
用法用量
・本態性高血圧症(軽症~中等症)
カルベジロールとして、通常、成人1回10~20mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
・腎実質性高血圧症
カルベジロールとして、通常、成人1回10~20mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
・狭心症
カルベジロールとして、通常、成人1回20mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
・次の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者➡虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全
カルベジロールとして、通常、成人1回1.25mg、1日2回食後経口投与から開始する。1回1.25mg、1日2回の用量に忍容性がある場合には、1週間以上の間隔で忍容性をみながら段階的に増量し、忍容性がない場合は減量する。用量の増減は必ず段階的に行い、1回投与量は1.25mg、2.5mg、5mg又は10mgのいずれかとし、いずれの用量においても、1日2回食後経口投与とする。通常、維持量として1回2.5~10mgを1日2回食後経口投与する。
なお、年齢、症状により、開始用量はさらに低用量としてもよい。また、患者の本剤に対する反応性により、維持量は適宜増減する。
・頻脈性心房細動
カルベジロールとして、通常、成人1回5mgを1日1回経口投与から開始し、効果が不十分な場合には10mgを1日1回、20mgを1日1回へ段階的に増量する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最大投与量は20mgを1日1回までとする。
特徴
臨床でよく用いられる。αも遮断するがメインはβ遮断(α:β=1:8)。気管支喘息の方には使用できない。β遮断薬の中で初めて慢性心不全に適応になった薬。
服薬時における注意点
- 自己判断での中止は必ず行わないように指導する。β遮断薬は急に中止すると症状がかえって悪化してしまうことがあるので徐々に減量していくようにする。
- 心臓を抑制する方向に働かせるため重度の心不全の方には注意。
- 車の運転を始めとする、危険を伴う機械の操作は控える。
- 脈が遅くなるので徐脈やめまいに注意。
- 糖尿病を合併症に持つ方に対して、低血糖症状をマスクしてしまうので注意が必要。
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