~薬剤師1年目で体験した話~
今回はお薬が変わっていますね、どうされたんですか?
いやね、この前新しく出されたお薬飲んでたら、急激に気分悪くなっちゃって副作用かなと思って、こわくてやめたんですよ。これを先生に言ったら副作用が出にくい薬に変えるって言ってたので。
それは大変でしたね。大丈夫でしたか?
そのときは前に薬剤師さんから言われたとおり、ブドウ糖を飲んでしばらくしたら治った。いやーあの時は死ぬんちゃうか思ったわー。その日は友達と昼間テニスで楽しんでて、夜晩酌をしてるときですよ。
そうだったんですね。今回は新しい薬に変わっていますので~…
(隣で聞いていた先輩)Kさん(ヒョコッ)
テニスしてた日って仰ってましたが、実は急激な運動でも低血糖は起きやすいんですよ。薬を飲んでる間は十分気をつけてくださいね。
え!そうなん!それは知らんかったわー。ちょっと気をつけるわー。
~投薬後~
えふえむくん、低血糖は薬の関係もあるけど、激しい運動や飲酒などで低血糖を起こすこともあるからね。今の患者さんは自分から喋ってくれたけど、次回からは自分からも聞いてみてね。ハイリスクの薬だと特に注意が必要やね。
そうですね。ハイリスク薬もっと勉強しないとですねー…。
けっこう糖尿病薬を出されている人って多くて、中には通常薬レベルのように感じている人もいるかもしれません。ですが低血糖症状は生活状況によっては引き起こすことも稀ではないですし、放っておいたら死に至ってしまうこともありますので、患者も薬剤師も十分に薬のことを理解することは大事になってきます。
糖尿病を知ろう!
今や糖尿病は生活習慣病として数多くの患者数がおり、2017年時点では約328万人と2008年頃からどんどん増え続けてます。
糖尿病は治療せずに放っておくと様々な合併症を引き起こし、生活に支障をきたします…。
様々な合併症というのは、血管の障害によるもので
と
といわゆる3大合併症と言われるもの。
こちらは比較的早い段階で出てくる合併症です。
私は上から「シ(神経)・メ(目)・ジ(腎)」で覚えたなー
つまり、放っておくと末期には
足がくさり、切断(末梢神経障害で化膿になどに気づかない)
目が見えなくなる(網膜症)
毒素が追い出せなくなる(腎障害)➡死亡
ということにもなりかねません。
糖尿病は生活習慣病という身近な病気でありながら、正しく治療しないと大変なことに繋がります…。
ですが!
逆に言えば、生活習慣から積極的に改善する努力をし、薬を正しく服用できていれば健康な人と変わらなく生活できる疾患であるとも言えます。
治療の方針
糖尿病の治療に種類があり、大きく分けて2つ
1型糖尿病 と 2型糖尿病
とに分けられ、型によって治療法が変わります。
1型糖尿病
インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が壊れてしまっていて、全くインスリンが出ていない型。日本人の糖尿病患者の約5%にあたります。
要因としては自己免疫性タイプと原因不明の特発性タイプに分かれます
いずれのタイプもインスリンの注射が基本です。
食事の炭水化物量に合わせてインスリンの量を調節する方法や、逆にインスリン治療に合わせて食事の炭水化物の量を調節する方法があり、「カーボ(炭水化物)カウント」と呼ばれている方法で治療していきます。
2型糖尿病
インスリン分泌の低下やインスリン抵抗性によって機能がうまく働いていない型。日本人の糖尿病患者の95%にあたります。
要因としては遺伝的要因と環境的要因があり
•遺伝的要因
親族に糖尿病を持っている人がいる(発生リスクが上がる)
•環境的要因
「食べすぎ」「運動不足」「ストレス」によるもの。
これらの要因が、複数組み合わさることによって糖尿病になると考えられています。
ほとんどの人がこのタイプやね
糖尿病の治療は、「診断されたら早速、薬」というわけではなく、まずは生活習慣の改善から行います。
診断基準
①早朝空腹時血糖値 126mg/dL以上
②食後2時間血糖 200mg/dL以上
③随時血糖 200mg/dL以上
④HbA1c 6.5%以上
①~③のいずれかと④が確認されると糖尿病と診断
これらの数値を下げていくのが目的ですが、改善するには2つ
運動療法 と 食事療法
ですね。
運動療法
- 急性効果として血糖降下作用
- 慢性効果としてインスリン抵抗性改善に伴う血糖コントロールの改善、肥満改善、降圧、脂質代謝異常の改善
の効果があります。
基本として、有酸素運動で持続時間は20 ~60分,運動頻度は週に3~5回が勧めらます。
一般的にはジョギング、ウォーキングやなー。
激しい運動でなく有酸素運動ね!
食事療法
体重の減少、HbA1cの低下、LDLの低下、中性脂肪の低下、HDLの上昇、血圧の低下、心血管疾患のリスク因子の改善
の効果があります。
基本はバランスの良い食事となります。
よく白飯やパンは「炭水化物だからダメなんですよね!食べないようにしてます!って方がいますが、あくまでも「バランスよく」です。
人間は生きていくためにもエネルギー(糖分で主に作っている)が必要ですので、極端に炭水化物だけを減らすというのはやめましょう。
その辺は管理栄養士さんの得意とするところですよね。
相談はそれぞれのプロに聞くのが一番!
それでも、なかなか改善しないとなると、いよいよ薬の導入となるわけですね。
薬の導入
糖尿病の薬は現在、世に出ているもので9種類あります。
さらに成分で細かく分けると、なんと32成分(インスリンは1成分でカウント)ほどあるんですねー。
多い…
⬇️それぞれの特徴まとめはこちら
さて、どう使い分けていくか、ですけども
患者さんの病態によってざっくりと分かれます。
①食後高血糖が高い
食べすぎたり、早食い、GI(グリセミック・インデックス)値が高い食物を摂ると、大量のグルコースを吸収してしまい、インスリンが肥満細胞をはじめ、心筋や筋肉への取り込みが追い付かなくなることで血管にグルコースがあふれかえる状態です。
治療薬の選択には
・腸管からのグルコースの吸収を抑えるαーグルコシダーゼ阻害薬
・本来、腎臓で再吸収されるはずのグルコースを尿と一緒に排泄させるSGLT-2阻害薬
が使用されます。
②インスリンは出ているが効きにくい(インスリン抵抗性)
インスリン抵抗性はインスリンが効きにくくなっている状態。各臓器に存在しているグルコースを取り込むGLUT-4が減っていることによって、取り込みが間に合わず、高血糖になります。
治療薬の選択には
・GLUT-4を増やしてインスリン抵抗性を改善するチアゾリジン薬。
・肝臓での糖新生を抑制する効果を持つビグアナイド薬はインスリンの抵抗性を改善する作用や腸間での糖の吸収を抑える作用を持つ。
が使用されます。
ビグアナイド薬のメトホルミンはよく使われていますね!
③インスリンの分泌能が低下している
膵臓が疲れていて、十分なインスリンが分泌されていない状態です。
治療薬の選択には
・インスリンのβ細胞に働きかけインスリンを強制的に放出させるスルホニル尿素(SU)薬と速効型インスリン分泌促進薬
・インスリンの分泌を促すインクレチンの分解を阻害するDPP-4阻害薬
・インスリンの分泌を促すGLP-1作動薬
・生体内のインスリンの代わりとなるインスリン製剤
が使用されます。
SU薬は昔から使われていますが、低血糖のリスクが高いね…
といった具合に病態によって使い分けていきますが、実際は①~③の状態が組み合わさったパターンが多いですね。
さて、治療する薬が決まったら、そこからは薬剤師の出番ですね。
後半へ続きます。
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