作用機序・特徴
交感神経に関わるα受容体はα1受容体とα2受容体に分かれ、
・α1受容体は主に血管平滑筋や瞳孔散大筋、尿道、前立腺に分布
・α2受容体は神経のシナプス前に存在する自己受容体として存在する。
さらにα1受容体はいくつかのサブタイプに分かれ
にそれぞれ分布する。
交感神経が優位になると、それぞれα受容体が刺激され、平滑筋は収縮し、血圧は上昇、尿は出にくい方向に働く。前立腺肥大症に伴う排尿障害にはα1A及びα1D受容体を遮断することで効能を示す。
今回まとめるα1受容体遮断薬は選択的にα1Aやα1Dに作用することで排尿障害に効能を示し、血管平滑筋に存在するα1Bにはあまり働かないことから血圧低下によるふらつきの副作用が少ないのも特徴である(ハルナール、フリバス、ユリーフ)。
※バトメット、エブランチル、ミニプレスに関してはα1A〜α1D受容体を遮断するので高血圧治療にも用いられる。
ちなみにα1A〜α1Dの分布割合については個人差があるので薬剤によっては効きやすさが違う場合があります。
適応が排尿障害のみのα1受容体遮断薬
ハルナール(タムスロシン)
・前立腺肥大症に伴う排尿障害
通常、成人にはタムスロシン塩酸塩として0.2mgを1日1回食後に経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
特徴
α1Aとα1D受容体を選択的に遮断(α1A:α1D=2.5:1)。血圧低下によるふらつきの副作用が少ない。徐放顆粒だが粉砕は軽くでなら問題ない。
フリバス(ナフトピジル)
・前立腺肥大症に伴う排尿障害
通常、成人にはナフトピジルとして1日1回25mgより投与を始め、効果が不十分な場合は1~2週間の間隔をおいて50~75mgに漸増し、1日1回食後経口投与する。
なお、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は75mgまでとする。
特徴
α1D受容体の遮断選択性が高い(α1A:α1D=1:4.8)。血圧低下によるふらつきの副作用が少ない。
ユリーフ(シロドシン)
・前立腺肥大症に伴う排尿障害
通常、成人はシロドシンとして1回4mgを1日2回朝夕食後に経口服用する。なお、症状に応じて適宜減量する。
特徴
α1A受容体の遮断選択性が高い(α1A:α1D=55:1)。血圧低下の副作用が少ないが、α1A受容体は輸精管や消化管にも存在するため、射精障害や下痢などの副作用が起こることもある。
半減期が6時間と短い。
適応が高血圧もあるα1受容体遮断薬
バソメット(テラゾシン)
・本態性高血圧症、腎性高血圧症、褐色細胞腫による高血圧症
テラゾシンとして通常、成人1日0.5mg(1回0.25mg1日2回)より服用を始め、効果が不十分な場合は1日1~4mgに漸増し、1日2回に分割経口服用する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最高服用量は8mgまでとする。
・前立腺肥大症に伴う排尿障害
テラゾシンとして通常、成人1日1mg(1回0.5mg1日2回)より服用を始め、1日2mgに漸増し、1日2回に分割経口服用する。なお、症状により適宜増減する。
特徴
α1受容体のサブタイプ(α1A〜α1D)全て遮断する。降圧剤として使われる場合が多い。
エブランチル(ウラピジル)
・本態性高血圧症、腎性高血圧症、褐色細胞腫による高血圧症
通常成人には、ウラピジルとして1日30mg(1回15mg1日2回)より投与を開始し、効果が不十分な場合は1~2週間の間隔をおいて1日120mgまで漸増し、1日2回に分割し朝夕食後経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
・前立腺肥大症に伴う排尿障害
通常成人には、ウラピジルとして1日30mg(1回15mg1日2回)より投与を開始し、効果が不十分な場合は1~2週間の間隔をおいて1日60~90mgまで漸増し、1日2回に分割し朝夕食後経口投与する。
なお、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は90mgまでとする。
・神経因性膀胱に伴う排尿困難
通常成人には、ウラピジルとして1日30mg(1回15mg1日2回)より投与を開始し、1~2週間の間隔をおいて1日60mgに漸増し、1日2回に分割し朝夕食後経口投与する。
なお、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は90mgまでとする。
特徴
α1受容体のサブタイプ(α1A〜α1D)全て遮断する。降圧剤として使われる場合が多い。
α受容体遮断薬の中で唯一、神経因性膀胱に伴う排尿困難に適応がある。
ミニプレス(ブラゾシン)
・本態性高血圧症、腎性高血圧症
プラゾシンとして通常成人1日1~1.5mg(1回0.5mg1日2~3回)より投与を始め、効果が不十分な場合は1~2週間の間隔をおいて1.5~6mgまで漸増し、1日2~3回に分割経口投与する。まれに1日15mgまで漸増することもある。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
・前立腺肥大症に伴う排尿障害
プラゾシンとして通常成人1日1~1.5mg(1回0.5mg1日2~3回)より投与を始め、効果が不十分な場合は1~2週間の間隔をおいて1.5~6mgまで漸増し、1日2~3回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減する。
特徴
α1受容体のサブタイプ(α1A〜α1D)全て遮断する。降圧剤として使われる場合が多い。
コレステロール代謝などに影響を与えないことが知られているため、糖尿病や脂質異常症(高脂血症)、高尿酸血症、気管支喘息などの合併症をもつ高血圧患者に対して、幅広く使用することができる。
服薬指導・注意点
- 効能としては1週間くらいで効き目が出てくる。
- 血圧低下によるふらつきやめまいは起こる可能性があるので十分に注意し、もし起こった時は椅子に座り、安静にする。コップ1杯の水分を取ると血圧も戻りやすい。
- 夜間頻尿によるつらさから水分をあまり取らない人もいるが、脱水症状のほうが怖い。なので一度に水分を多く取らず、1日かけて少しづつ摂取し(1時間にコップ1杯程度)、夕方からは量を少なめにするなど工夫する。
- 長時間の座位は避ける。
- 入浴などで血行をよくし、下半身の冷えを防ぐようにする。
- 市販の風邪薬などで尿を出しにくくする作用の成分(抗ヒスタミン剤、抗コリン薬)が含む場合があるので使用を避ける。
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