薬剤師2年目の時、後輩君と…

えふえむさん!バイアスピリンが粉砕の指示で処方箋が来てるんですけど!

なに!?(バイアスピリンは腸溶錠…ここは勉強もかねて…)後輩君、どうする?

バイアスピリンは腸溶錠ですから粉砕はダメですよね?ここは先生に聞くしかないですね。

せやな!聞いてみよっか!
~後輩君、疑義照会中~

あのー…どうしても飲み込めないから粉砕はできないのかということでした…どうしましょ…

あー…先輩!どうしましょ(笑)

おいおい(笑)教えたれよ(笑)
んーそうやね。とりあえずメーカーに聞いてみたらどう?

すみません…

僕、聞いてみますね!
~後輩君、メーカーに聴取中~

先輩!どうやら…
さて今回は嚥下困難患者にどうしても粉砕でいきたかった時の話です。
アスピリンの作用
アスピリンはNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)の仲間でCOX(シクロオキシゲナーゼ)を阻害することで様々な作用を示します。
薬としての作用
①大部分の正常細胞や組織に発現しているCOX-1を阻害することによりその部位におけるPG(プロスタグランジン)の産生を阻害します。
主に3つ
①炎症部位➡PGはブラジキニンなどの発痛物質の疼痛閾値をさげることから、それを防ぐことによる抗炎症・鎮静効果。
②視床下部にある体温調節中枢➡PGの体温を上昇させる効果があるため、それを防ぐことで解熱効果。
③血小板のTXA2(トロンボキサンA2)を阻害することにより血小板の凝集を抑える(血をサラサラにする)。
副作用
①胃腸障害
胃粘膜上皮細胞のCOX-1を阻害することでPGの合成を阻害。PGは胃粘膜保護効果を持つため、それを阻害することにより胃粘膜障害を起こす。
②腎機能障害
PGは血管を拡張し、血液増加作用を持つため、PGが産生しにくくなることで腎血流量や糸球体濾過速度が下がり、急性腎不全を起こすことがある。
なんで腸溶錠?
腸溶錠と工夫されている理由はずばり胃腸障害の回避です。
アスピリンは体内に吸収されてから、胃粘膜上皮細胞に作用し胃腸障害を起こすことがありますが、胃粘膜に直接接触することにもより、局所的な作用も示します。

なので腸溶錠は腸で溶ける工夫をすることで胃腸障害のリスクを低下させているわけですね。
実際、粉砕することはある
実は添付文書にも書いていますが
急性心筋梗塞ならびに脳梗塞急性期の初期治療において,抗血小板作用の発現を急ぐ場合には,初回投与時には本剤をすりつぶしたり,かみ砕いて服用すること。
バイアスピリン錠100mg 添付文書
とされています。
というのも急性心筋梗塞や脳梗塞急性期の場合は早くに抗血小板作用を発現させたいのですが、腸溶錠だと効果発現に4時間くらいかかるため、砕いて服用するんですね。

砕くと効果発現は約15分ほどです。
結局どうなった?

先輩!どうやら、「砕くのはやむなしですけど、胃腸障害にご注意ください」とのことでした…!かくかくじかじかで…

なるほど…ならばDrにフィードバックやな!

(たぶん知ってると思うけど…)
その患者さんは急性期症状の方ではなかったのですが、嚥下が困難だったので【胃腸障害に注意しながら】ということで砕いてお渡ししました。
今回はそんなお話。
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